若山牧水賞【若山牧水賞運営委員会】

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ホーム > 歴代受賞者 > 第22回若山牧水賞(2017年)三枝 浩樹

歴代受賞者

第22回若山牧水賞

受賞者 三枝 浩樹 さいぐさ ひろき

歌人
昭和21年 山梨県生まれ
法政大学文学部英文学科卒業

三枝 浩樹
受賞作品 歌集『時禱集じとうしゅう
◎発行所/角川文化振興財団
◎発行年月日/平成29年2月22日
~自選15首~
きみなくてレリークヴィエを聴きいたりは雨のしののめらしい
野に熟れたるトマトの甘さひとふりの塩きらめきて色の濡れたり
イフェマールとはつかのまのいのちにてそのつかのまをわれらは生くる
うつせみのひかり集めてたまかぎる夕べの色とわれはなりゆく
野の道に西日やすみてワレモコウいろあざやかに立ちいたりけり
ひとりにひとつの死、ふたつなき死を負えば歔欷きよきしずかなる雪に降る雨
うつしよに母のいまさぬ四季めぐり今朝甲斐が嶺に雪しろく積む
おのずから胸に浮かびてとどまればしばし秘密のごとく母恋う
亡き者と在る者・非在と存在の近しさ あわれ秋の日の中
或る痛ましい過去をもつ少年に
きみの中の花瓶は修復できるから なずなすずしろを摘みにいこうか
谷間ながるるひと幅の水 秋ふかきひかりはこんなところにも居る
ときどきのかりそめをおのが姿とし水ながれたりひかりとなりて
広やかなあおぞら ゆるすということを否、ゆるされていること知らず
八月六日の朝に
福島にむきあう広島 ヒロシマとフクシマ 雨の八時十五分
ゴドーを待ちながら人生がすぎてゆくかたえの人もようやく老いぬ
受賞歴 平成28年 「二〇一五年夏物語」31首で第52回短歌研究賞受賞
作歌活動 短歌結社「沃野」代表。

歌集:『朝の歌』『銀の驟雨』『世界に献ずる二百の祈禱』『みどりの揺籃』『歩行者』
その他著書:『八木重吉 たましひのスケッチ』など