若山牧水賞【若山牧水賞運営委員会】

文字サイズ変更文字を小さくする文字を元の大きさに戻す文字を大きくする

ホーム > 歴代受賞者 > 第21回若山牧水賞(2016年)吉川 宏志

歴代受賞者

第21回若山牧水賞

受賞者 吉川 宏志 よしかわ ひろし

歌人
昭和44年 宮崎県日向市東郷町生まれ、3歳まで過ごす。
以後は宮崎市で育つ。
京都大学文学部国文学科卒業

吉川 宏志
受賞作品 歌集『鳥の見しもの』とりのみしもの
◎発行所/本阿弥書店
◎発行年月日/平成28年8月1日
~自選15首~
うちがわを向きて燃えいる火とおもう ろうそくの火は闇に立ちおり
磔刑の縦長の絵を覆いたるガラスに顔はしろく映りぬ
胡坐から体育座りに変えながら「廃炉」の文字を持ちつづけおり
石段の深きところは濡らさずに雨は過ぎたり夕山の雨
白菊の咲く路地をゆく傘ふたつ高低変えてすれちがいたり
ときどきは白き狐の貌をするむすめが千円くださいと言う
窓のした緑にるを拾いたりうちがわだけが死ぬコガネムシ
鳥の見しものは見えねばただ青き海のひかりを胸に入れたり
ビニールに包まれ白き櫛があり使わずに去る朝のホテルを
吉野山の深さは花の深さにてあゆめどもあゆめどもひだの中なり
花びらは土に還りて黒ぐろと千年前の花を踏みたり
立ちながら殺されてゆく樹がありぬ或る条文のようにしずかに
耳、鼻に綿詰められて戦死者は帰りくるべしアメリカの綿花
はじめから沖縄は沖縄のものなるをしたがわせ従わせしたがわせ来ぬ
小児甲状腺癌百人を超ゆという数のみを言えりその百の咽喉のど
受賞歴 平成6年 「妊娠・出産をめぐる人間関係の変容-男性歌人を中心に」で
第12回現代短歌評論賞受賞
平成8年 『青蟬』で第40回現代歌人協会賞受賞
平成13年 『夜光』で第9回ながらみ現代短歌賞受賞
平成17年 「死と塩」30首で第41回短歌研究賞受賞
平成18年 『海雨』で第11回寺山修司短歌賞受賞及び第7回山本健吉文学賞受賞
平成25年 『燕麦』で第11回前川佐美雄賞受賞
平成28年 『鳥の見しもの』で第21回若山牧水賞受賞
作歌活動 昭和62年、短歌結社「塔短歌会」入会、平成27年より主宰。
京都新聞歌壇選者。

歌集:『青蟬』『夜光』『海雨』『曳舟』『西行の肺』『燕麦』
その他著書:『風景と実感』『読みと他者』など。