若山牧水賞【若山牧水賞運営委員会】

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ホーム > 歴代受賞者 > 第13回若山牧水賞(2008年)日高 堯子

歴代受賞者

第13回若山牧水賞

受賞者 日高 堯子ひたか たかこ

昭和20年 千葉県生まれ
早稲田大学教育学部国語国文学科卒業

日高 堯子
受賞作品 歌集『睡蓮記(すいれんき)』
◎発行所/短歌研究社
◎発行年月日/平成20年5月12日
~自選15首~
奇妙なり 新月のやうにしづもりてくる身体ありカルデラの底
かたはらに乾いた舌を垂らしたる犬のやうなる風巻きあがる
そして脳はほの白い宵の花となりカルデラの上の月に酔ひにき
あしびきの山に骨なし「骨のないものは崩る」と母はかなしむ
空をとぶ乳房もあれよはるばると雲がにほへば母ぞこひしく
黒フリルうつくしき秋の牡蠣を食む いのちの反りのよみがへる午後
母がため午後は湯をときまぜてあたたかさうなあの世をつくる
延命治療せずときめたる その午後の一万年の海のきらめき
はつなつの雲を映せるバスタブに母を洗へばほととぎす鳴く
水瓶のふちにとまれる黒揚羽どんなゆめから羽化してきたか
ふくふくと桃がならびぬ をとめからおうなまでたつた百年の夢
時間ふと薄わらひすることありてわれは川底の小石をひろふ
敗戦日 空また晴れて日晒しの青姦(あをかん)のやうな日本も見ゆ
恋力(こひぢから)いきのこりゐて黒南風のちかづくなかをの花ちる
光の画家モネのつかはざりし黒 黒とはあるいはことばかもしれぬ
受賞歴 平成16年 歌集『樹雨(きさめ)』で第31回日本歌人クラブ賞及び第14回河野愛子賞
平成19年 『芙蓉と葛と』30首で第43回短歌研究賞
平成20年 歌集『睡蓮記』により第13回若山牧水賞受賞
作歌活動 昭和54年 「かりん」入会

歌集:『野の扉』『牡鹿の角の』『袰月もゆら』『玉虫草子』『樹雨』
評論集:『山上のコスモロジー・前登志夫編』『黒髪考、そして女歌のために』