若山牧水賞【若山牧水賞運営委員会】

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ホーム > 歴代受賞者 > 第2回若山牧水賞(1997年)佐佐木 幸綱

歴代受賞者

第2回若山牧水賞

受賞者 佐佐木 幸綱ささき ゆきつな

昭和13年 東京都生まれ
早稲田大学大学院修士課程修了

佐佐木 幸綱
受賞作品 『旅人』(たびびと)
◎発行所/ながらみ書房
◎発行年月日/平成9年9月23日
~自選15首~
オランダ語霧と流るる中の椅子旅人としてわれら家族に
そらのみなとそらのみなとととなうればほのぼのとわれに空の波音
いまだ見ぬわが家わが明日、遠景にてのひらほどの風車が見えて
人もまた風景となりかがやける風車へ向かう道をのぼれり
稲妻に裂かるる地平、いっぽんの大楡ぐいと立ち上りたり
いつしかも萌え揃いたる糸杉の風に抱かれてはじめての渦
暗き運河に浮き居て鴨は百年の静止の時を楽しめるらし
晩年の杉田玄白、スーパーにパン運び居て思わしむらく
外人として噛んでいる「銀」という言葉の芯の古き何ものか
かささぎの飛び過ぐる窓、樫の木の新しき芽もさびしきあした
いよよ濃き闇、死の年の自画像もレンブラントは黒服を着て
壊れたる古城を見つつゆく旅のさびしからずや秋かぜの音
フェルメールの町と思えば尖塔の上なる雲の銀のかそけさ
運河(カナール)を遡りゆくひとりなる白鳥よ去年を憶えているか
網目なす冬の梢にかかりたる暗き夕日を見る者はなし
受賞歴 昭和46年 歌集『群黎』により現代歌人協会賞受賞
平成2年 歌集『金色の獅子』により詩歌文学館賞受賞
平成6年 歌集『瀧の時間』により迢空賞受賞
平成9年 歌集『旅人』により第2回若山牧水賞受賞
作歌活動 「早稲田短歌会」を経て、現在「心の花」編集長。
朝日歌壇選者。

歌集:『直立せよ一行の詩』『夏の鏡』『火を運ぶ』
評論集:『萬葉へ』『柿本人麻呂ノート』『極北の声』
ほか